『宮脇檀の住宅設計 カラー・改訂版』

“一戸一戸は住み手の欲望を満たすべく、あらゆるメーカーの部材と部品の満艦飾となって妊を競い、隣家の日照を無視せざるを得ない狭小敷地に法を犯していっぱいに作り、4mに満たない道路ギリギリに、コストが安いというだけで味気ないブロック塀を立て列ね、ミニ開発と称する倭小住宅が人びとの持家意識にこびてのさばり、公園も緑もほとんどなく、子供たちは狭い道いっぱいに走り去る車におびえて室内に閉じこもり、主婦たちは井戸端会議の場も持てず隣り近所との交際は減る一方。
…中略…
火災時に消防車も進入できぬ車道の両側にこんな百鬼夜行の住宅が埋め尽くす それが日本の住宅地である”

 

※『街並みを創る 戸建住宅による住環境形成の理論と手法』(丸善 1983)まえがきより
住宅設計の第一人者と呼ばれた宮脇檀氏が語った当時の言葉は手厳しいものだった。彼は、美術館、庁舎、銀行、学校、店舗となんでも巧みに設計し、どれも人々の注目を集め話題となったが、最も情熱を注いだのは住宅であった。

本書は、2007年の発刊以来で大好評を博した『宮脇檀の住宅設計テキスト』のカラー改訂版である。図面のルール、全体計画、各室の設計、外部仕上 げ、開口部、設備と、住宅建築に関するあらゆる問題に対して宮脇檀建築研究室は回答を出している。住宅をどのような「もの」として捉え、どのように「かたち」にしていったかが語られており、住宅設計を学んでいる人、住宅設計に携わっている人、我が家を建てようとする人などのノウハウ書として広く受け入れら れた。

今回は図面をカラーにしつつ、さらに具体例のディテールが多数掲載されているので、壁や天井、通風、階段などあらゆる設計に対する疑問が解消できる内容になっている。モノクロではイメージしずらかった素材や色の扱い方も知ることができ、宮脇氏が目指した空間構成の理解が早まる。
著者は感覚的な印象論・抽象論に留まらず、歴史学的な文献分析にはじまり、私たちが生活において感動する実態を、論理的かつ実証的に解明している。パラパラと眺めるだけでも、住宅に興味のある知的なミドルエイジにとっても最高の娯楽になりえるだろう。

また随所に挿入されるエスキース(デッサン図)もクリエイティブ人間にとってはたまらない。画家である父親と作家の母親の影響もあるのだろう、カラーで描かれた設計エスキースは額に入れてもそのまま飾れるクオリティで見入ってしまう。

ありふれた建売り住宅や大手ハウスメーカーがオススメする家がぴたりとあてはまる家族なんて、そうはいないだろう。多くの場合を想定してのモデルルームではあるが、実際の家族構成やライフスタイルなんてのは千差万別。私達が一番長い時間付き合あっていく住居環境は、もっと主体性を持ってデザインしてもよいのではないか。

住宅における建築家の考え方がよく分かり、設計の基本が理解できる一冊。これから、家族の人生を含めどのように設計していいか悩んでる方はぜひ参考にしてほしい。 

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