【HONZ活動記】本を読まない人間が、多読すると芸術家になる

投稿者: Atelier Fuzuki Arai 投稿日:

現代アーティストとして制作しながら、書評家としても活動

本を読まない人間 

元マイクロソフト社長である成毛眞が率いるHONZは1周年を迎えた。その裏側で、レビューアーとして選ばれ書評を書く芸術家の、私の人生は劇的に変化した様子を綴ろうと思う。 
私の名は新井文月といい、女性を想像する方も多いと思うが男性である。特技は絵を描く事とダンスで、HONZの前身である本のキュレーター勉強会に出会う前は女性にだらしなく、将来計画もない、ゲームと漫画が大好き、金銭感覚ゼロの人間だった。画集や図版こそ好きなものの、本はほとんど読まなかった。 
先日もHONZ1周年プレパーティーが開催されたが、お客さんの一人に「新井さんてレビュアーですか?」と聞かれてしまった。その時は平然と対応したが、こちらはいつも熱いレビュー書いてるつもりなので、その晩は枕を濡らした。
本の魅力に憑かれる
数年前の私は大げさでもなく、私はこの先どう生きようか真剣に悩んでいた。彼女もいない、ダンス講師の職も失った不安定なプー太郎である。ある日、渋谷の本屋に立ち入り『本は10冊同時に読め!』という一冊を目にする。「そんな十冊も読めるわけないだろ」と思いつつ、ページをめくると文体が熱く「本を読まない人間はサルである」とまであった著者の考え方にどんどん引込まれた。本で広がる世界とはそんなものか!と私は何かとんでもない一冊と出合った気がした。本を読めば無限に世界は広がり、人生自由でバラ色だ!俺に足りないのは本だ!と渋谷Book1stの天井を見上げ拳を握っていた気がする。
私の長所だか短所だか解らないが、超楽観主義ということで翌日から本当に十冊を同時並行で読み続けた。歩いては読む、電車で読むのはもちろん、風呂で読む、トイレで読む。踊りながら読む、それは冗談だがそんな勢いだった。ジャンルはノンフィクションに限らず小説もボーダーレスで読んだ。はじめ本当に知恵熱が出た。ちょっとどころか、たくさん背伸びした。だが一ヶ月もすると慣れてきてた。
するとどうだろう、ある日「ドイツはプロテスタントが偶像崇拝を禁止したから、逆に音楽が発達したのかな?」といった具合で歴史と芸術の知識が往来した。これがキュレーションの片鱗だったのかもしれない。そのうち、パラパラと大筋を知る読み方をするようになった。知識は加速し、世界はより広がった。あまり内容の無い箇所は、本の中身を画像として記憶していった。それは絵画に使うテクニックである。その情報の波を編纂する中、これまでの自分はなんてちっぽけだったのかを感じるようになった。
そんな日々に、代表のブログに「キューレーター勉強会募集」という知らせがあった。街中が色付き人々の笑顔が飛び交うクリスマスイブ、私は一人孤独に応募してみた。
HONZレビュアー
合格発表はトイレの中だったのでよく覚えている。「荒井文月」とあったので別人かと思った(たしか人を動かすデール・カーネギーはデキる人の条件に「人の名前を間違えない」とか)。でも職業に「絵描き」とあったので、これは確実であおう。
合格は心底嬉しかったが、同時に強烈な不安が襲われた。こんな元プープーの自分が参加してついていけるのだろうか?最初の自己紹介、広告代理店/有名企業/書評家、エリートで博学な者たちに緊張しまくった。ただその状況下で、ワクワクしたほうが上だった。これからを楽しもうと思った。
代表:成毛眞について
そんな人達の代表だから、やっぱり代表の成毛眞はそばで観察していて興味深い。喜怒哀楽、世の中の醜美を堪能し人生を謳歌しているように思える。また組織運営やリーダーシップの取り方から、徹底してプロを感じとれる本当に学ぶ事が多い人だ。このままだと「大事な事はすべてHONZから教わった」なんてビジネス書にありそうな本が出版されるのではないだろうか。それは書いてみたい。ちなみに後日、代表は言った「同時に十冊読むのは無理だろう」と笑
劇的変化
本の世界を知り、こんなにも世界は広いのかと衝撃を受けた私は、それからアーティストを気どるのをやめた。やるべき仕事をきちんと仕上げ、人に配慮するようになった。部屋を掃除し、神棚をつくって毎日感謝をしてみた。
不況下だったがトランスコスモスという1部上場会社員になれた。それからデザインの仕事に本に没頭した。さらにアートは深夜に手掛けた。救いだったのは、絵を描くことと、文章を書く事は何時間でもやっていられるので抵抗がない。単位ギリギリだが、多摩美術大学を出たので芸術の知識が少しだけあった。エリート揃いのHONZでも差別化する為には、アート本を多く紹介するようにした。そうした結果、どっぷり自分がアート本にはまってしまった。そのまま今では芸術家としてアートを自分の言葉で語れる。
それでも時間は有限なので、何かを得るには、何かを捨てなければならないと思った。まずタバコを辞めた。非生産的なつきあいを止めた。本当に楽しいのは、やるべき事をなし得ている時だと次第に悟っていった。
私の場合だが、同時並行のほうが効率が良い。家で朝起きて頭が冴えている間にひとつの文章を一気に書く。進まなかったら掃除など家事をする。一段落したら、本を読む。そうしてる間、イメージが浮かび絵を描く。身体を動かしたくなったら途中で音楽を聴きダンスするという具合。このパターンは好きな事だけをしているので極端にストレスが無い。その分、余裕がもてる。また最初のタスクに戻る際は、原稿が限りなく客観的に観れるので修正しやすい。そんな私に彼女ができ、いまは2児の母となっている。
◆アートで明るく
HONZに出会えた事で私にも目的ができた。アートの魅力を少しでも伝えよう。変なものからとびきり美しいものまで、私も興味が尽きない。
日本では美術系の学生は毎年8000人が卒業する。アートを志す人だけでこの人数だ。趣味で芸術を楽しむ人はもっといると想定した。いまHONZ読者は圧倒的に男性が多いが、女性にとっても読みやすいはずだ。
クリエイティブクラスと呼ばれる人達は文化やアート話に精通し、フェルメールやモネなど知っている前提で話をしてくる。ただ現代アートは少し基礎がないと話ができない。そんな世界も、面白く紹介できればと考えた。芸術はいつもどこか胡散臭く、ユーモアと若干の嘘があり、観る人を楽しませる。

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