『金魚のことば 君のきもちと飼い方がわかる73の質問』魚と心が繋がるに方法

投稿者: Atelier Fuzuki Arai 投稿日:

これから記述する文章は金魚や魚を奨励するものである。「金魚なんか興味ないし、今後も好きにならなそう」という人にとっては全く価値のない話かもしれない。そういう方は飛ばしていただいて構わない。かくいう私も金魚といえばアートアクアリウム展に足を運んだものの、ああ可愛いな、程度しか感じない人だった。

金魚といえば夏であり、お祭りの金魚すくいでとってきた魚を家で飼い、中秋の名月とともに愛でるのも乙である。昨年、地域の夏祭りに家族で参加してきた。出店の屋台に金魚すくいがあったので、祭りの儚さ、時の移ろい感も手伝って、一回やってみようかとトライした。そうなると子供も喜ぶし、どうせやるならお父さん頑張って的な流れとなる。なんとか3匹程金魚をすくったのが運のツキ。金魚をすくえばすくったで、もちろん持って帰りたいと子供達から言われるわけで、持って帰れば、じゃあ水槽どうする?やれエサは?となるわけである。

我が家では中途半端なものは即処分するルールの為、買うなら独創的な水槽を置こうと、見た目スタイリッシュなガラス製の水槽を購入した。水槽に砂利も用意し完璧だと思っていたのだが、次の日、金魚は死んでいたのである。それも毎日一匹ずつ死んでいく。一匹50円で金魚の仲間を購入してはみたものの、アトリエから帰宅する度に死んでいく。そうなると連日屍が浮いているため、金魚の墓を掘るのが日課となっていた。

懐が寒くなるよりも、胸が寒いというか痛くなり、どうすれば金魚を長生きさせる方法があるのか悪戦苦闘しながら出会ったのが本書である。
本書の魅力は、正しい飼い方により金魚生命の危機を脱出できた点にある。ただ、それよりも金魚が言わんとする主張が理解できるようになったことだろう。実は金魚は声も判断でき、読んだ名前も覚えている。口をパクパクするだけに思える彼らの行動や習慣も、本書の解説でいうと「こう思っているんだろうな」という推測が成り立ち、こちらも対処するべき対話が生まれる。魚の生理・生態に基づく金魚の言い分が実に良くまとめられているのだ。
金魚が突然死んでしまうのは、新しく家に迎えた数日内が圧倒的に多い。死因の多くは、人間でいう心臓マヒか肺炎だ。綺麗事ばかりで金魚は飼えない。金魚は丈夫な魚なので、最初の飼うタイミングさえ乗り越えればすぐ死ぬことはない。もし金魚をつかまえてきたら、まず最初の3日間は餌をあげずに様子をみよう。腸内のバクテリアが繁殖し、消化システムが稼働するのを待つのだ。新しい水には別のバクテリアがいるので、腸内バクテリアが入れ替わるまでは断食なのである。暗然たる思いから、餌をあげたいのもわかるがじっと待つ事がコツである。金魚はエサを求めてはいない、欲しいのは酸素だ。これが金魚の言い分である。
最初は逃げてばかりで寄ってこなかった金魚が、次第にパクパクと口をあわせてすり寄ってくるようになる。正しい水かえと餌やりを経て、元気で純度の高い金魚の口パクが見れた瞬間、死の側面ばかりを見ていた私の心はフッと軽くなった。そして言葉では言い表せないキンちゃんの口パクに対して畏敬の念を覚えるのであった。これは夏祭りで偶然拾ってきた金魚という外部環境と、これまで自分が培ってきた美的感覚との内面世界が一体化した瞬間だった。大げさかもしれないが世界はシンプルな愛で構成されているかのように思えてくるのだ。
この本の特徴として、飼育者と金魚との距離感を縮める方法をいくつも紹介し、金魚を身近に感じるように読者を誘導している点がある。意思疎通ができれば、最初は怖くて人間の手をさけるような金魚達も、次第にすりよって元気に応えてくれるようになる。
それは頻繁な水替えだったり、手のり金魚など生活の場に溶け込ませる方法だったり、金魚の品種としての特徴の楽しみ方であったりする。そのため品種紹介と飼育ノウハウに終始する他の飼育本とは異なり、「第一章 どうしてそんなにかわいいの?」のタイトルからも読み取れるように、金魚愛に溢れた、ある種の品格さえ感じる本となっている。
もちろん水に対しての正しい知識が役に立つ。水が汚れたからといってミネラルウォーターを入れるのはやめたほうが良い。カルシウムやマグネシウムなどミネラルが入っているのは硬水だが、金魚に適しているのは実は軟水だ。pHも金魚にとって高すぎるものが多いので危険だ。それよりも塩素を抜いた水道水を使う方が安心なのだ。治療方法は0.5%の塩水。酸素も重要、軽くブクブク気泡を含まないといけない。私も酸素が足りておらず、結局3匹殺してしまった。すまないキンちゃん。
実は、金魚は元々中国で突然変異した赤いフナである。今の金魚はカラフルだが、赤でもカーマインから朱色、オレンジ色など濃淡あり、また紅白が混ざった模様や、赤白に黒が混ざった三色柄のエレガントスタイルもある。なぜか金魚通な人ほど独自の美的感覚なのか、肉瘤モリモリにかわいさを感じるそうだ。私は肉瘤がある金魚が好きになれないが。
挿絵のイラストは筆タッチで優雅であり、とても気にいっている。鳥獣戯画よろしく、それぞれ金魚達が踊り、歌い、病気でダウンしている様子などは個人的に非常に好みの絵で、ちまちまと時間を忘れて読むのに最適である。はじめて金魚を飼う人や、もっと金魚を上手に飼いたい人達も勉強になる一冊。
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江戸創業金魚卸問屋の金魚のはなし

江戸創業金魚卸問屋の金魚のはなし

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  • 作者:吉田 智子
  • 出版社:洋泉社
  • 発売日: 2013-07

話のネタとして質が高いトリビア満載の金魚本。著者は東京本郷で創業350年の金魚卸屋の女将。金魚には魔除けの意味があり、第二次大戦のときの空襲で「飼っている家には爆弾が落ちない」といわれ人々は争って金魚を求めた。しかし生きている金魚を入手するのが難しくなり、陶器のおもちゃがつくられた。娯楽としての金魚はここから始まったとされる。

原色金魚図艦―かわいい金魚のあたらしい見方と提案

原色金魚図艦―かわいい金魚のあたらしい見方と提案

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  • 作者:岡本 信明
  • 出版社:池田書店
  • 発売日: 2011-06

2013年アートアクアリウム展
http://h-i-d.co.jp/art/nihonbashi/

テトラ 金魚水槽 お買得セット GB-30GS

テトラ 金魚水槽 お買得セット GB-30GS

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  • 作者:
  • 出版社:テトラジャパン
  • 発売日: 2010-11-29

個人的に購入、フィルターやフード、水質調整とセットでお買い得。ガラスは枠無しでスタイリッシュ。

ナチュラルシェルターきり株L

ナチュラルシェルターきり株L

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  • 作者:
  • 出版社:ジェックス
  • 発売日: 2010-02-01

秀逸すぎるネーミングもさることながら、精巧なつくりで金魚は隠れ家として大のお気に入り。


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