本書は最先端のアートや展示など、世界への発信にフォーカスした美術情報誌だ。

vol.11となる今回では、森美術館で来場者数60万人以上を記録した塩田千春の展示会と、アートにおけるブロックチェーンの特集。また元サッカー日本代表の中田英寿による紀行や、メディアアーティスト落合陽一による新連載がスタートしている。

なにより特筆すべきは和英併記で、全項目に英文が記載されている点だろう。言わずもがなアート自体が欧米主体ルールのため、英語表記は自国の文化を海外へ発信しつつ価値を高めることになる。本紙が置いてある場所も、東京(羽田)国際空港、ザ・リッツカールトン東京、ジャパン・ソサエティー(米国)など、その哲学が垣間見える。

 

「塩田千春展:魂がふるえる」は、ガン治療中に制作した作家が「魂」や「生と死」という重いテーマを扱ったにもかかわらず、幅広い層を巻き込み森美術館の歴代入館者数第2位(666,271人)を記録した。これまで自身について多くを語らない塩田であったが、来年度より森美術館館長に就任する同展覧会のキュレーター片岡真実にインタビューすることで、その世界観が浮き彫りになっている。

ちなみに2018年の香港アートバーゼルでは代表的な糸のインスタレーションが展示されていた。森美術館の展示では、自身が作品の一部となるパフォーマンス、手がけた舞台美術、「たましいってどこにあるの?」と子供達にインタビューする映像などであり、本書を通じて25年間の活動が体感できる。

 

 

元サッカー日本代表の中田英寿は、世界100ヶ国以上の都市を旅する過程で「日本の価値」に気づいたという。日本の伝統文化に直接触れることで中田が見いだした「世界に誇れるいいもの」=「にほんもの」を紹介するという連載企画だ。今回は佐賀県への旅を紹介。中田は佐賀を、都心からのアクセスが良い意味で離れており違う文化を堪能できる場所としている。嬉野茶、日本酒、陶磁器を紹介しており、現代に伝統を引き継ぐ人々の技に対して、彼は研ぎ澄まされた感性で対話する。

 

 

西島大介によるマンガ「アートブロックチェーンネットワーク~100万年後の未来~」からはじまるブロックチェーン特集では、イメージがつかみづらいアート×ブロックチェーンについても自然と興味が沸く構成となっている。対談では世界の美術作品について複製不可にするシステムといった、次世代のアート民主化イメージも語られている。

また新連載「落合陽一の視線」では、メディアアーティスト・落合陽一が写真家としての一面を展開。秋に開催された個展「情念との反芻―ひかりのこだま、イメージの霊感―」で発表された新作を、本人インタビューとともに紹介している。想像の余地を残すため、あえてぼかしを入れた撮影をするなど、こだわりの撮影術を語る。

バイリンガル紙のため、英語ではどういう言い回しをするか表現の参考にもなる。日本語のみでアートを発信していても、グローバルの観点では島国のフォーマットとしか見られないかもしれない。文化をアーカイブする上でも貴重な一冊となるだろう。

画像提供:株式会社 音美衣杜

 


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