東麻布 靴屋のシャッターに裸のビーナス アートボランティア

投稿者: Atelier Arai Fuzuki 投稿日:

東麻布のシャッター通りの靴屋から、「シャッターに何でもいいから絵を描いてくれませんか」と問い合わせがあり、「何でもいいなら是非やらせてください」とすぐに返事をしたのがキッカケです。場所は都営大江戸線の赤羽橋駅徒歩3分。東京タワーが目と鼻の先にあり、靴屋は駅からすぐ東麻布商店街の中心にある。のどかな雰囲気を持つ趣ある場所です。



靴屋の外観はこんな感じですが、先にも述べたように商店街は昭和の雰囲気で、かなりゆったりと時間が流れています。シャッターには20年程前に描かれたという、抽象的な絵がありました。店主の夫婦が言うには、シャッターが色あせてきたので新しくしたいそうで、欲をいえば靴屋として認識できて、今どき感を出してほしいとの事でした。シャッターにアートを配置したいという、その発想自体が好きなのと、東麻布商店街の活性化のため、私達は心意気に答えたいと引き受けました。

70年代の商店街の話を聞きながら、どうやら新たに誕生させたい思いをくみ取った。私は新しいデザインをその場でラフを3パターンほど描いて見せました。そのうち、一番のお気に入りは、この「裸のビーナス」です。しかし、見せた途端に夫婦は驚き「派手すぎる」とか「裸はちょっと」と言われ、すぐに却下されました。


まさかの却下!!

一方、靴屋の前にいつも椅子に座り、日なたぼっこしているお店のおばあちゃんがいた。
彼女は「古い絵」を気にいっているようで、私が描きなおそうとするのに気づくと「なんだい、何しにきたんだい?」と警戒ぎみに声をかけてきた。最初からリニューアルに積極的でない様子。

正直、デザイン案は通らないわ、お店の人達の応援も無く困りはてた。さらに期日。毎年10月1日に商店街で開催される「かかし祭り」に間にあわせたいという。アイデアのボツを出された時点で残り1ヶ月も猶予がない。よくよく考えてみると恐ろしいクライアントである。(念のために記述すると、私達はボランティアである)

ただ、どうしても誰でも思いつきそうなデザインが嫌だったので、意を決して再度夫婦に提案した。「私は商店街全体の事を考えています。若者達にアンケートをとるとビーナスのイメージは気にいってるし、このボッティチェリの作品は《ビーナスの誕生》というタイトルで、それは商店街に活気が戻りますよ」と、我ながら説得力の無い気合いだけはあるビーナス案を押した。

では検討します…と言われ後日連絡あり

⇒快諾。ヨシャー!

許可がおりれば話は早いので、早速制作にとりかかりました。ボランティアで集まってくれた方々のお手伝いもあり、作業はスムーズに進行しました。本当ありがたい限りです。
例のおばあさんはペンキで下地を塗る際も、横から不安そうに見ていた。「こんどの色は長く持つのかねぇ」
何と答えていいかもわからないので、正直言って期待に答える事ができるかな、という不安がありました。

その時である。ボランティアの一人が、バケツをくもうと水道の蛇口をひねりすぎて勢いよく噴射!

シャアアアアア!!

おばあちゃんに直撃!!ずぶ濡れだ!

だがその状況で彼女は名言を吐いた。

「アタシまでキレイにしてくれるのかい?」

ワーハッハッハ!!

その一言で、私達は心が軽くなった。制作はどんどん進行した。シャッターはお店が閉まらないと作業ができないので、閉店後の夜に一気に進めた。

そして完成!!
制作は無事「かかし祭り」に間に合わせることができた。あとでお店の夫婦から聞いた話では、シャッターはお祭りのあと、東麻布商店街で話題となったそうだ。

完成後に再び現地にむかうと、例のおばあちゃんが椅子に座っていた。
彼女はシャッターを近所の人に見せ、「エロい絵ができたんだよ」とほほ笑みながら説明していた。
2011.10.20
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【靴屋のビーナス】
497×276cm
ペンキ、アクリル、PS加工シート場所:都営大江戸線 赤羽橋 中之橋口出口 徒歩3分
東京都港区東麻布1-17-16
FOOT WEAR SHOP 小泉靴店(いーすと通り) 03-3583-1572
カテゴリー: ART VOLUNTEER

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