アート書評『美貌格差』生まれつき不平等の経済学

投稿者: 投稿日:

現代社会において、親の年収、生まれ持っての美貌、また育つ環境など本人の努力では埋められない格差は確実に存在する。
それでも生き方の自由は保持されており、美貌を持つ人がさらに戦略を持って生きるのも自由だし、反対に美貌を持たざる人が徒手空拳的に人生に臨もうが、生き方自体は(程度によるが)否定はされず自由に選択できるといえる。
よく「ブサイクは意外と性格が悪いよ」「美人のほうが素直でいい子が多い」などという論議があるが、これは正義とか道徳的な話ではなく、確実なのは人は誰しも容姿について強い興味があり、本書ではそれらが引き起こす格差が存在するという事実を論じている。
本書では客観性をもって人の容姿・美形がどのように社会のステイタスに影響を及ぼし、そのお得度合はどの程度なのかを科学的に測定している。例えばCEOの容姿は企業業績に影響するのか?など。私達が生きる社会において容姿というのは、給料から就職から選挙、結婚まで幅広い範囲に影響していることがわかる。
そのため事実にもとづくデータや数字や経済学が好きな方、または美意識が高い方もしくはコンプレックスがある人にとりわけオススメだ。
著者のハマーメッシュ氏は米国でルックスについての経済学を研究し続ける労働経済学の権威。この著者が20年かけて解明した結果を、『ヤバい経済学』・『ブラック・スワン』を手掛けた翻訳者、望月衛氏の文体でズバズバと語られる。身も蓋もない真実が露わになるが、そこはそれリアリティに溢れ面白い。
美形かどうかは会社の業績、選挙の結果、融資の条件、寄付金集めにも影響するらしいが、トップCEOがイケてるほうがその会社の業績は良くなるのかについては、結論からいうとYESだ。欧米のCEOは、見た目コンサルタントを雇い、Photoshopでレタッチしたポスターを掲げ、プレゼンにおける身振り手振りを指導され、なんて例が挙げられるが、この効果は科学的なデータの上でも証明されている。政治家が容姿に時間をかける費用対効果は絶大なのである。
本書の中身を読むまでは、女性だけについてフォーカスしているのかと思ったが、男性がイケメンになると、どれくらい年収が得になるのかも記載されていた。そう、美形だったら人生バラ色なのか?気になるトピックスはこんな感じだ。
第3部 愛、借金、そして法律での美形
第7章 友だち、家族、そして借金の市場における美形
第4部 美形の先行き
第9章 ブサイクの行く末

ブサイクって。また直接的な言い回しだが、全てをさらけ出してしまうのが本書の怖い所でもある。さらけ出すといえば、本書の第4章「特定の職業における美形」においては、ロスアンゼルスやメキシコの美しいが売春婦が周りに比べて、どれだけ稼いでいるかにも数字で言及しているのが興味深い。
本書の表紙はルネサンス期のイタリアの画家サンドロ・ボッティチェリの『ヴィーナスの誕生』だ。歴代Adobe Illustrator起動画面でもお世話になったイメージだ。バージョンがCSになってからは廃止されたが、クリエイターには馴染み深い「美の象徴」である。しかし当時のふくよかを好む美の基準では絶世の美女だが、今の美的感覚ではぽっちゃりなはずだ。その点、時代による美的感覚は著者は至極全うな基準で美を定義している。
お会計の際、私も思わず愛想がよくて可愛い書店員のレジに本を持っていった事実が、本書説のなによりの実証だ。


0件のコメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください